秋から冬に移り変わるこの季節、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
体調の変化が現れやすい時期でもありますが、日中はまだ冬になる前の比較的穏やかな気候を楽しめる日もあるかと思います。
イギリスの秋は短く、暑い夏が終わった9・10月はあっという間に過ぎ去ってしまう気がします。
9月から新年度がはじまるため、その忙しさも相まって体感としては想像以上に短く感じるのでしょうか。
さて、イギリスは毎年3月と10月の最終日曜日はタイムゾーンが切り替わる節目の月でもあります。
今年2020年は3月29日(日)と10月25日(日)が該当します。
昨年2019年は3月31日(日)と10月27日(日)のように、毎年日付は変動しますが、最終日曜日であることは変わりませんので覚えやすいですね。
「タイムゾーン」や「グリニッジ標準時」、「夏時間」という言葉を聞かれたことがあるかと思いますが、今回は混乱しがちなイギリスの時間のあれこれについて詳しく解説いたします。
タイムゾーン
まず、「タイムゾーン(Time Zone)」とは日本語に訳すと時間帯のことで、同じ標準時(Standard Time/スタンダードタイム)を用いる地域全体を指します。
日本とイギリスにはそれぞれ1つずつ標準時があり、同一のタイムゾーンとなりますが、国や地域によっては複数の標準時があることもあります。
東西に長く広がっている、国土の広い国や島国、例えばアメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、ブラジル、ロシア、オーストラリア、ニュージランド等が該当します。
日本の標準時は「日本標準時」で、協定世界時(UTC)より9時間進んでいるため「UTC+9」とも表記されます。
日本標準時子午線は東経135度です。
英語では「Japan Standard Time」、略称を「JST」と表記します。
イギリスの標準時は「グリニッジ標準時」で時間としては協定世界時(UTC)と(ほぼ)同じですが、厳密には明確な違いがあります。
グリニッジ標準時は経度0度のグリニッジ子午線、本初子午線です。
英語では「Greenwich Mean Time」、略称を「GMT」と表記します。
それでは、協定世界時とは何かを見ていきましょう。
協定世界時
「協定世界時」とは世界共通の標準時で、セシウム原子時計を基準とする時間です。
英語では「Coordinated Universal Time(CUT)」ですが、頭文字表記は言語により異なり、混乱が生じてしまう恐れがあったため「UTC」に統一されています。
例えば、フランス語の頭文字表記は「TUC」、ドイツ語では「KW」となります。
「平均太陽時(Mean Solar Time)」という恒星の日周運動に基づく世界共通の時間が「世界時」、英語では「Universal Time(UT)」と呼ばれます。
協定世界時の「UTC」は世界時の「UT」と頭文字表記に統一性があるため採用されています。
グリニッジ標準時は一般的には「UTC」と同意で扱われることが多いようですが、グリニッジ標準時が平均太陽時であることに対し、協定世界時はセシウム原子時計を基本としている違いがあります。
協定世界時は非常に正確ですが、平均太陽時の世界時との誤差が微妙に生じてしまいます。
そのため、世界時の一種「UT1」との誤差を調整し実生活に影響が出ないようにするため、「閏秒(うるうびょう)」というものがあります。
直近では2015年7月1日と2017年1月1日にそれぞれ1秒間の閏秒の挿入が行われたことが記憶にある方も多いのではないでしょうか。
タイムゾーンは協定世界時(UTC)を基準に表記されています。
例:グリニッジ標準時 UTC+0
日本標準時 UTC+9
イギリスの標準時
実はイギリスの標準時は年間を通して常にグリニッジ標準時ではありません。
毎年10月最終日曜日から翌年3月最終日曜日までの5ヶ月間のみを用い、その他の期間は「夏時間」に切り替えます。
夏時間
夏時間とはその名の通り夏の時期に実施される時間のことで、太陽が出ている時間帯を有効的に利用するために生まれた、標準時を1時間進める制度です。
英語では「Summer time」といい、イギリスの夏時間は「British Summer Time」、略称を「BST」と表記します。
日本語ではイギリス夏時間や英国夏時間と呼ばれます。
協定世界時より1時間進むため、UTC+1と表記されます。
毎年3月最終日曜日から10月最終日曜日までの7ヶ月間、一年のうち半分以上の期間が夏時間となります。
標準時よりも夏時間の方が長い期間実施されているのは面白いですね。
ちなみに、この期間はヨーロッパ各国共通(夏時間を実施していない国を除く)です。
夏時間は夜まで明るく過ごせるため、電力消費を抑え、活動できる時間が1時間長くなることによる経済効果等、利点があるため、ヨーロッパを中心に他国でも実施されています。
しかし、近年では夏時間に切り替わる際の1時間の差がすなわち睡眠時間の減少となり、健康への悪影響や時刻の切り替えに関する手間等を考慮し、ヨーロッパでは現在、廃止の検討が進められています。
日本も過去に実施されていた歴史がありますが、現在は正式には採用されていません。
また、British Summer Timeを意味する「夏時間(Summer time)」の対義語として、グリニッジ標準時のことを「冬時間(Winter time)」と便宜上表現することもあります。
夏時間と冬時間の切り替わり
毎年3月最終日曜日の午前1時が午前2時になり、時間が1時間進むのが夏時間です。
そのため、夏時間に切り替わる日は夜が1時間短くなるため、睡眠時間が若干短くなりますね。
毎年10月最終日曜日には午前2時が午前1時になり、時間が1時間戻るのがいわゆる冬時間、グリニッジ標準時です。
冬時間に切り替わる日は夜中が1時間長くなるため、睡眠時間が若干長くなりますね。
コンピューターやスマートフォン等の通信機器は自動的に切り替わりますが、アナログ時計は時針を1時間調整する必要があります。
イギリスは全てがきっちりしている日本とは違い、大らかな部分も多いため、夏時間に切り替わってもしばらくの間は時計が切り替わっていなかったり、年中冬時間のままの時計があったりしますので、切り替わりの時期は注意しましょう。
夏時間と冬時間の切り替わりの瞬間、コンピューターやスマートフォンの時刻を眺めていると時刻が1時間飛んで切り替わります。
夜中ではありますが、もしチャンスがあったら確認してみても面白いのではないでしょうか。
夏時間と冬時間の切り替わりの日の確認方法
イギリス政府の公式ウェブサイト「GOV.UK」の以下のページをご確認いただくことで、過去3年と今年、そして翌年の夏時間と冬時間の切り替わりの日をご確認いただけます。
When do the clocks change?
https://www.gov.uk/when-do-the-clocks-change
もしくは、イギリスの祝日カレンダーをご利用のカレンダーに登録いただくと自動的に表示されるようになります。
イギリスと日本の時差
日本標準時はUTC+9と通年固定のため、イギリスとの時差には時期によって差が発生します。
日本はイギリスより時間が進んでいます。
イギリスがグリニッジ標準時の毎年10月最終日曜日の午前1時から翌年3月最終日曜日の午前1時までは、日本との時差が9時間となります。
イギリスが夏時間の毎年3月最終日曜日の午前2時から10月最終日曜日の午前1時までは、日本との時差が8時間となります。
例えば、グリニッジ標準時(冬時間)のイギリスが午前9時のとき、日本は午後6時(+9時間)です。
夏時間のイギリスが午前9時のとき、日本は午後5時(+8時間)です。
時間に関係する便利な英単語
すでにいくつかの英単語をご紹介しましたが、その他、時間を表現する上で便利な英単語をご紹介いたします。
Ahead — 時間が進んでいることを表現するときに使える単語
例:Japan Standard Time is nine hours ahead of Greenwich Mean Time.
(訳:日本標準時はグリニッジ標準時より9時間進んでいます。)
Behind — 時間が遅れていることを表現するときに使える単語
例:British Summer Time is eight hours behind Japan Standard Time.
(訳:イギリス夏時間は日本標準時より8時間遅れています。)
英語では「時間が遅れている」という表現より「進んでいる」という表現が好まれる傾向にあるため、上記例はもちろん意味が伝わる文章ではありますが、「2つの国・地域の間の時差は何時間」という表現が無難でしょう。
Time difference — 「時差」
例:The time difference between the UK and Japan is nine hours.
(訳:イギリスと日本の時差は9時間です。)
At — 時間を表現する際に使う前置詞
例:Let’s meet at 10.00 am tomorrow.
(訳:明日、午前10時に会いましょう。)
In — 時間帯を表現する際に使う前置詞
例:4.00 pm in Greenwich Mean Time
(訳:グリニッジ標準時で午後4時)
「.(Full stop/フルストップ)」 — 時間の区切り
イギリスでは「:(コンマ)」より「.(フルストップ)」で時間と分を区切ることが一般的です。
「:(コンマ)」が間違いというわけではありません。
am — 「午前」
ラテン語の「ante meridiem」が語源です。
英語に訳すと「Before noon」、正午の前という意味です。
必ず数字の後に付け、原則小文字表記です。
イギリス英語では省略された単語の「.(フルストップ)」は原則省きますので、アメリカ英語や他の英語のように「a.m.」とは書きません。
フルストップを使った表現でも、もちろん意味は伝わりますが、省いた方がよりイギリス英語らしくなります。
pm — 「午後」
ラテン語の「post meridiem」が語源です。
英語に訳すと「After noon」、正午の後という意味です。
必ず数字の後に付け、原則小文字表記です。
イギリス英語では省略された単語の「.(フルストップ)」は原則省きますので、アメリカ英語や他の英語のように「p.m.」とは書きません。
フルストップを使った表現でも、もちろん意味は伝わりますが、省いた方がよりイギリス英語らしくなります。
Midnight — 「夜中の12時」
例:We should leave by midnight.
(訳:私たちは夜中の12時までに離れなければならない。)
Midday — 「正午」
例:Lunch is served around midday.
(訳:昼食は正午頃に提供されます。)
一日の間、中間という意味が転じて「正午」という意味の単語です。
もしかすると「Noon」という単語の方が日本で英語教育を受けた方にはなじみ深いかも知れませんが、「Midday」の方がイギリス英語らしい単語です。
UK time — 「イギリス時間」
イギリスの標準時はグリニッジ標準時ですが、通年同じではありませんので、便宜上「UK time」という表現を用いることができます。
そうすることで、読み手がグリニッジ標準時とイギリス夏時間のどちらかを適宜解釈することができ、夏時間と冬時間の切り替わり時の混乱を防ぐことができます。
例えば、海外支社や海外に顧客がいる会社の営業時間等の表記に便利です。
例:9.00 am in UK time
(訳:イギリス時間で午前9時)
もし上記例を「9.00 am in Greenwich Mean Time」と表現した場合、イギリス夏時間では午前8時となってしまいます。
「in UK time」という表現を用いることで、通年同じ時間という意味を込めることができます。
Japan time — 「日本時間」
正確には日本標準時、Japan Standard Timeですが、口語では「国名+time」という表現で伝わります。
例:10.00 pm in British Summer Time is 4.00 am in Japan time.
(訳:イギリス夏時間で午後10時は日本時間で午前4時です。)
イギリスの時間についてまとめましたが、イギリス生活を豊かにする時間に関する情報と英語表現をこの記事で学んでいただけたかと思います。
イギリス留学中は自国との時差を意識しながら生活される方も多いかと思いますので、英語の知識と合わせてこのような生活に根付いた豆知識があると、日常会話に役立つ機会があるかもしれませんね。