プラスチック排除の流れが強まるイギリス

2020年8月28日

8月も終わりに近づき、イギリスの気候は夏から短い秋に移り変わろうとしています。

日中は過ごしやすいながらも夏らしい気候を楽しめますが、朝晩は上着が必要なほど肌寒くなります。

冬に切り替わるまでの間、比較的過ごしやすい穏やかな秋は短くも木々の紅葉を楽しめる時期でもありますが、イギリスでは紅葉を愛でる文化はありません。

 

さて、近年世界中で環境に配慮し、海洋ゴミの量を減らすため、プラスチックの使用量を削減しようという動きがありますが、イギリスでもその流れを昨年から特に強く感じるようになってきました。

ラップや食品を包装するフィルムのように薄いプラスチックはリサイクルできない自治体がほとんどのイギリスでは、ペットボトルや食品トレーのようなプラスチックをリサイクルしています。

 

2020年4月からはストローや綿棒の軸、飲み物に使われるマドラーは従来のプラスチック製の物が流通禁止となりました。

2015年10月以降はイギリス全土でプラスチック製のレジ袋(プラスチックバッグ)が有料化*され、2018年1月以降はマイクロビーズ(マイクロプラスチック)の使用が禁止されたことをはじめ、近年では消費者が容器を持ち寄り、ナッツや穀物、水や牛乳等、あらゆるものを量り売りする小売店も現れました。

使い切った洗剤のボトルを持ち寄り、中身のみを詰めて販売している店舗もあります。

 

プラスチックバッグ有料化の前まではスーパーマーケット等で重いもの、例えばペットボトル飲料数本を購入した場合、無償で袋を二重にしたり小分けにしたりしてもらっていたことと比べると、ここ数年で生活スタイルや消費者の意識が大きく変わりました。

買い物に出かけるときには何かしらの袋を持参し、日頃からかばんやポケット等に折りたたんだ袋を用意している方が非常に多くなりました。

 

* イングランドでは従業員数が250名を超える小売業者は使い捨てのプラスチックバッグ1枚あたり、5p(約7円、為替レート£1 = ¥140で換算、2020年8月現在)を消費者に請求することが法で定められています。

イギリスの構成国毎のプラスチックバッグ有料化の流れと金額は以下の通りです。

  • ウェールズ:2011年10月(イギリス初)から全店舗で5p(約7円)以上の請求
  • 北アイルランド:2013年4月から全店舗が5p(約7円)以上の請求
  • スコットランド:2014年10月から全店舗が5p(約7円)以上の請求
  • イングランド:2015年10月(イギリス最後の導入)から従業員数250名を超える小売業者は5p(約7円)以上の請求、2021年4月からは全店舗が10p(約14円)以上の請求に法改正予定

 

イギリスは連合王国のため構成国4国で文化や法律等が異なります。

詳しくは「イギリス、UK、イングランド、英国 ー 意外と知らないイギリスの正式名称」をご覧ください。

 

Bags for Lifeという、「一生使える」プラスチックバッグを導入している店舗も多く、これは一度購入すればバッグが劣化や破損した際に無償で新品に交換してもらえるという制度です。

あくまでも古いバッグを新品と交換できる制度ですので、紛失時には新しく購入する必要があります。

小売店により価格は異なりますが、使い捨てのものより若干高価で、10p(約14円)から20p(約28円)であることが多いです。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の被害拡大により、作業効率化を図り、感染の可能性を減らすため2020年秋頃までは例外的に配達の食料品に使われるプラスチックバッグを無償で提供することとなっています。

 

また、プラスチック製の袋を廃止し、紙袋を販売する店舗も出てきました。

 

日本でも一時、リサイクルゴミとなるプラスチックの量の多さがニュースで取り上げられ話題となったようですので、意識されている方も増えてきているのではないでしょうか。

 

以下はイギリスのスーパーマーケットの野菜売り場の写真ですが、まだまだプラスチックで包装された野菜が多く、一部のバラ売り野菜のみ無包装で陳列されています。

イギリスでは加工野菜、例えば調理可能な状態にカットされた野菜やサラダ等は工場で包装までされて売り場に並べられるため、搬送の効率化を図る意味でもプラスチック包装は必要なのかもしれません。

 

しかし、一部店舗では以下のように多くの野菜や果物が無包装で販売されています。

以下の例では薄手のビニール袋も無償提供されていますが、無包装の野菜や果物を買い物袋に入れて傷まないように持ち帰ることが難しい場合もありますので、物によっては陳列時から包装されています。

 

イギリスで販売されているきゅうりは日本の品種より太く皮が厚めですが、一つずつフィルムで包まれた状態で販売されています。

フィルムの必要性を問う意見もありますが、きゅうりは無包装状態では乾燥しやすいため、プラスチック排除を過剰に進めてしまうと食品廃棄率が上がってしまうという弊害が現れます。

全てのプラスチックを無くせばいいという単純な問題でないという点が難しいですね。

 

プラスチックの使用量を極限まで減らす動きもあります。

例えば、ペットボトル飲料のラベルはボトル全体を一周するような従来の形ではなく、必要最低限の情報を載せられる使用量に抑えた商品が増えてきています。

こちらの商品は商品説明やバーコード等がボトル上部の短いラベルに印字され、メーカーのロゴは別シールとして貼られています。

従来のボトルを上から下まで包むラベルは必要ない部分もプラスチックで包んでいたため、アイデア次第でプラスチック使用量を抑えられるといういい例ですね。

 

ペットボトルのキャップも無着色のものに統一するメーカーも出てきています。

左は古いオレンジジュースのボトルのキャップですが、オレンジ色に着色されています。

他にも例えばパイナップルジュースは黄色、トマトジュースは赤色のように、商品の色に合わせて様々なキャップの色がありました。

右は現行商品のオレンジジュースのキャップですが、半透明の着色されていないプラスチック製となっています。

日本で製造されているペットボトルのキャップは概ね白色に統一されていますが、イギリスでは商品ごとにデザインの一部として着色したキャップが一般的でしたので、無着色は新しい動きです。

 

飲料関連ではストローが紙製に切り替わる動きが急速に広まり、現在では紙製のものが標準となりました。

カフェやレストランでも紙製のストローが使用されていますが、スーパーマーケット等でも紙製の商品が販売され、生分解性プラスチック製でない限り、従来のプラスチック製は販売中止となりました。

以下はスーパーマーケットに陳列されている紙製ストローです。

赤枠内の商品ですが、紙製の箱に紙製のストローが入っているため、プラスチックは一切使用されていないものとなっています。

ストローの下段、黄色の枠内の商品は爪楊枝と使い捨てナイフ・フォーク・スプーンのセットですが、箱が紙製のためリサイクルに配慮されています。

少し前までは爪楊枝はプラスチック製の容器に入っていたり、中身がよく見えるようにと透明のプラスチック製の箱に入っている商品が多かったのですが、紙製の箱に切り替わってからは、購入前に中身を確認したい人が開けてしまうこともあります。

消費者の意識改革も必要と感じる部分ですね。

 

なお、もしかすると商品の陳列が若干乱れているように思えるかもしれませんが、この程度はイギリスではごく普通の光景です。

このような点もイギリス留学で現地の生活を送らない限り、あまり体験する機会のないことですね。

実生活を通して、日本とは違うイギリスを体感することができるでしょう。

 

洗剤類にもプラスチック使用量を削減する動きが見られます。

以下、赤枠内には空のスプレー容器と濃縮洗剤が陳列されています。

この商品はスプレー容器に濃縮洗剤を入れ、水道水で希釈することで、従来の洗剤と同様に使える、搬送や陳列の効率化にも配慮された環境に優しいアイデア商品です。

 

使い切った洗剤のボトルを再利用する商品もあります。

別売の濃縮洗剤と水道水を入れることで、スプレー容器を再利用できます。

 

箱ティシューのKleenex(クリネックス)は今年2020年に入った頃から、箱取り出し口に貼られていたプラスチックが紙に切り替わりました。

 

以下は従来の商品です。

箱取り出し口にはプラスチックフィルムが貼られているため、フィルム部分は自治体によってリサイクルできないと表記されています。

 

新しい商品には箱取り出し口に紙が貼られているため、箱全体がリサイクルできるという表記に切り替わりました。

 

紙に切り替わっても使い心地はあまり変わりなく、企業努力の成果が現れている商品です。

リサイクルのためにフィルム部分を剥がす必要がなくなり、箱をつぶすだけでリサイクルに出せるようになったのは利点です。

 

他にも生活に関わる物からプラスチックを排除しようという動きが盛んに行われています。

また近年、一部ではありますが、家庭に配達される新聞や郵送物はプラスチック製の袋から植物由来のリサイクル可能または燃やすゴミとして処分できる環境により配慮した袋に切り替わりました。

スーパーマーケットでは新聞が無包装で販売されています。

新聞内に小冊子や広告等が挟まっているため、落とさないように気をつけて手にする必要があります。

不要な袋は若干の利便性を欠いてでも排除する動きがあります。

 

イギリスの美術館組織、「Tate(テート)」のメンバーシップ制度に加盟しているメンバー向けに定期的に送られる会報誌「Tate Etc.(テート エトセトラ)」は2019年までは100%リサイクル可能の植物由来のポリエチレン製の袋に入って届いていました。

 

2020年に入ってからは、より環境に配慮された100%堆肥となるじゃがいもでんぷん由来の素材で作られた袋に切り替わりました。

半透明のさらさらとした、ある程度の耐久性のある材質が特徴です。

ガーデニングや燃やすゴミ袋として再利用できると表記されています。

プラスチックではないため、リサイクルできないことも注意書きとしてあります。

 

大手新聞社の「The Guardian(ガーディアン)」も同じ素材の袋を使っています。

 

 

イギリスではプラスチックの使用量を減らす動きが強まっていますが、リサイクルゴミにしっかりと分別することや瓶等を繰り返し再利用することは個人の裁量によるものですので、一人一人の意思改革が重要なのかもしれません。

プラスチックを瓶に切り替えた場合、重量増加により輸送費やトラックの排気ガス等、環境への被害が増えるとも言われているため、一筋縄ではない問題ですが、環境改善に向けての動きはこれからより促進していくことでしょう。

 

ペットボトル飲料やきゅうり1本を例にとっても、日本とイギリスがどのように違うかを学べる貴重な機会となるイギリス留学。

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