Mother’s day
今週末、2021年3月14日(日)はイギリスのMother’s day(母の日)です。
日本の母の日は毎年5月の第2日曜日、今年2021年は5月9日(日)ですので、イギリスでは約2ヶ月も早く行われます。
Mothering Sunday
イギリスの母の日は日曜日であることは固定ですが、日付は毎年変動します。
「Mothering Sunday(マザリング・サンデー)」と呼ばれる記念日が現代の母の日として扱われていますが、厳密には全く異なる伝統です。
キリスト教において、亡くなったイエスキリストが復活した日を記念して祝われる「Easter(復活祭)」の3週間前がMothering Sundayとなります。
Easterが必ず日曜日となるため、必然的にMothering Sundayもその名の通り日曜日となります。
この「Mothering」、「Mother」は「母親」以外にも「母教会(キリスト教の洗礼を受けた教会)」や「母なる自然」を意味します。
イギリスの伝統
元々は中世のイギリスでMothering Sundayに母教会に供物を捧げた日で、伝統的に、ドライフルーツを使った口当たりの軽い、11のマジパンボールが乗った「Simnel cake(シムネルケーキ)」を食べ、黄色が眩しい春の花「Daffodils(ラッパスイセン)」を贈りました。
16世紀頃まで母教会に供物を捧げる伝統が続き、17世紀以降は若干形式を変えて、イギリスの伝統として現代まで続いている歴史があります。
そのため、母親に日頃の感謝を伝えることが目的のMother’s dayとは主旨が異なります。
しかし、アメリカ社会の影響が強くなった昨今、アメリカ発祥のMother’s dayの名称が現代のイギリスでは定着しています。
イギリス社会には現代でもキリスト教の影響が強く残っているため、個人の宗教観や信仰の自由に関わらず、文化として自国の伝統を大切にしている方がたくさんいます。
留学生もイギリス出身の方と交流する機会があるかと思いますが、その際はイギリスの文化や歴史、伝統を尊重し、学ぶ姿勢が非常に重要となります。
多様性を受け入れるイギリス社会
イギリスは個人の考えが大切にされるため、みなさんが母親にプレゼントを贈るわけではありませんが、母親にゆっくりしてもらう日や、花やカードを贈り、日頃の感謝を伝える日と捉えている方も大勢います。
しかし、近年、このプレゼントを贈るという商機に関連して、現代社会の多様性を受け入れようとする動きが盛んになっています。
母親がいない、亡くした等、様々な家庭事情があって当然の現代のイギリス社会では、母の日を祝う人々もいれば、母の日という言葉を聞くことすら辛い方々もたくさんいらっしゃいます。
そのため、最近ではメールマガジン等で母の日のプレゼントの情報や関連した内容のメールが送られることを望まれるか、事前に確認のメールを送る企業・お店が増えてきました。
そのようなメールでのお知らせを望まれない方は、確認メールのボタンを押すだけで、母の日関連のお知らせが配信されないという仕組みです。
この動きを歓迎する声は非常に多く、母の日を祝いたい人も除外していないため、多くの人々の要望に可能な限り対応するという企業努力が見えます。
Father’s day(父の日)にも同様の動きがあるため、両方またはどちらかのみを祝われないという方にとって、このような配慮は嬉しいかと思います。
ちなみにイギリスの父の日は毎年6月の第3日曜日、今年2021年は6月20日(日)で、日本と同じです。
第2次世界大戦以降に広まったと言われており、実は母の日やMothering Sundayと比べ、歴史が浅い日です。
母の日を例に、現代のイギリス社会の多様性の一面に目を向けてみましたが、これ以外にも様々な面で社会から特定の人々を除外することがないよう、慎重に配慮することが求められています。
様々な人々が少しでも過ごしやすくなるよう、イギリス社会がいい方向に向かっていることを実感することができます。